JR土佐久礼駅 おいしいもん小旅~秋冬版~

中土佐LOVER

JR土佐久礼駅 おいしいもん小旅~秋冬版~

特産品

 

 夕暮れの西の空、山肌はどっぷりと濃い深緑をまとっている。10月ともなれば日暮れは早い。くりぬかれた土地から「くれ」と名付けられたように※1、久礼は東側を除き三方が山に囲まれた町。秋冬は峰に遮られ、早々に陽が陰る。

 土佐久礼駅17:44発の上り特急あしずり14号までは時間がある。夕方の少し肌寒い風が頬を打つ。帰りの汽車で何を嗜もうか、そこはやはり、お酒かなと。
 目指すは、お宮さん通り※2の酒屋山八酒店。この時間ともなれば辺りの飲食店は閉まっており、自ずと柔らかな灯りに照らされた店内に目がいく。棚に並んだ瓶、カラフルなラベルを眺めているだけで時が過ぎる※3。汽車の中で飲み切るのに丁度よい地酒のミニボトルも豊富。籠の中に濁酒(どぶろく)を発見。清水園の「楼古里(ろっこり)」だ※4。180mlで700円(税込)は呑み鉄にも優しい。大野見は久礼から車で20分程の山間の集落。米どころとして名高いが、その大野見の特別栽培米を用いて仕込んだ正真の地どぶろくである。

 アテは昼食後に大正町市場で仕入れておいたカツオのハランボ串※5。色々なフレーバーがあるがやはり定番で一番人気の塩が好きだ。少々物足りないかと思いつつ酒屋の引き戸を開けると、「くれ天」の幟が目に入った※6。土佐沖で獲れた小魚を素材に手作りで仕上げた久礼の天ぷら。食感の良さ、頬張れば魚の香り。駅までの食べ歩き用に一枚、そして車中用に一枚購入。

 近年「呑み鉄」というジャンルが台頭してきた。きっかけはNHK「六角精児の呑み鉄本線・日本旅」※7という番組。六角さんが車中揺れながら日本酒をすする姿を見る度に、また旅に出たくなる。 
 土佐久礼駅、窪川方のトンネルに前照灯の光りが反射した。高知駅までささやかな晩酌の時間だ。

text:キハ55

【脚注】

※1久礼の地名の由来
 諸説ある。松永美吉著、日本地名研究所編集『民俗地名語彙辞典』(筑摩書房)によると、クレは、「①田畑の畝などを作る時、鋤き起こした土の塊を意味する言葉で岩手県から熊本県まで全国で使われる②「カラ」の転。カレ(枯)・カラ(涸)で水の乏しいところを意味する。カレト(枯所)、カラト、カロウト、カラコ。所屋根の一番高い所、扇状地の中央、丘陵の谷頭、準平原の一番高い所などの地形③「暗い」の転。北西~北向の地。日ヶ暮、日ヶ隠、呉地など西日本に多い④落石程度の崩壊地名。刳る(クル)がなまってクリ(栗)となることもある」と記載されている。
隣接する四万十町に「下呉地」(しもくれじ)という地名があり、隣には「影野」もあることから、暗い、が転じて、クレになったと言われている。(奥四万十 山の暮らし調査団webサイト参照https://www.shimanto-chimei.com/

※2お宮さん通り
 高知市から四万十市(旧中村市)に向かう中村街道(お遍路さんが三十七番札所岩本寺へ向かうのに使う街道)を窪川方面へ行き、「和食・宴 あずま」の角から久礼八幡宮に向かう久礼のメインストリートの一つ。食堂や雑貨屋などが軒を連ねるが、昔ながらの商家や民家の名残もある通り。久礼大正町市場HP→こちら

※3山八酒店
 久礼にある現存する高知県最古の酒蔵「西岡酒造」の日本酒「久礼」も並ぶが、高知県内の地酒も豊富。一升瓶、四合瓶、ミニボトルとサイズも豊富。久礼大正町市場HP→こちら

※4楼古里(ろっこり)
 清水園(通称「濁酒清水園」)では、「楼古里」と「逸粲(いっさん)」という2種類のどぶろくがあり、共に第15,16回の全国どぶろく研究大会コンテストで優秀賞を受賞している。大野見の清流に育まれたお米を使用したお酒づくりに励んでいる。清水園HP→こちら

※5ハランボ串
 久礼大正町市場に露店を構える「串焼きポン吉」で購入できる。海の上のジビエ、鰹の大トロの部分である「ハランボ」を久礼で腕利きの魚屋さんから仕入れ、串焼きにする。塩は地元の「心平」を振りかけている。串焼きポン吉→こちら

※6くれ天
 お宮さん通りにある「岡村かまぼこ店」他、道の駅なかとさ等でも販売。そのままで、おやつや酒のアテに最適。地元ではアレンジレシピがある。おでんや煮物に入れるもよし、お好み焼きや焼きそばなどの具としても良い。自身の好物は、ネギとマヨネーズかけ。
久礼大正町市場HP→こちら

※7「六角精児の呑み鉄本線・日本旅」
 NHKで放送中の番組。六角精児が「酒」と「鉄道」という偏った視点により日本を再発見する旅番組。