久礼のカツオが美味しい理由
カツオのプロが
三拍子そろった町
1.
釣るプロ
カツオを新鮮に釣る技術
基本は24時間で戻って来る、日戻り漁!
久礼では冷凍しない生ガツオを食べることが基本なので、漁師はとにかく「鮮度」を大事にします。その為、久礼のカツオ漁は夜中に出港し翌日夕方までに戻り水揚げする「日戻り漁」が主になっています。さらにカツオは衝撃やストレス、わずかな温度変化でさえもその身質に影響を受けるため、久礼の漁師は釣り上げた後も鮮度を保つ為冷やし続ける必要があり気が抜けません。すべては美味しいカツオを心待ちにする人々の期待に応えるため!
漁場(沿岸)
よいナブラを見つけるべし!
久礼のカツオ一本釣りは土佐沖が主戦場。漁では「ナブラ」と呼ばれる魚群を見つけることが重要です。近年は高知県が設置した魚礁「黒潮牧場」のナブラを狙い漁を行います。また「地ナブラ」と呼ばれる鯨や流木などに集まる群もあります。船頭らが、鳥やソナーの状況をみながら探します。
釣り方
素早く丁寧に釣るべし!
船がナブラに近づくと、餌のイワシまきと散水機での水まきをします。沸き立つ水面をイワシと勘違いし興奮して食べようとするカツオを、「かえし」のない疑似餌針のついた釣り竿で一本ずつ釣ります。頭上高く跳ね上げると針からカツオが外れ、そのまま再び針を海に。一本釣りでは、いかにカツオにストレスを与えず、傷をつけずに釣り上げるかも重要です。
冷やし方
すぐに&常に冷やすべし!
カツオの鮮度を保つには、とにかく冷やすことが大事!釣り上げられたカツオはそのまま船上にあるトイを流れて魚槽に入ります。その中には塩半分・水半分の割合の約0℃の冷水があり、釣った瞬間からしっかりと冷やされていきます。港に戻ってからも競りまでに時間がかかるときは、氷水をかけたりして鮮度キープに努めます。
2.
売るプロ
美味しい魚を見分けて、新鮮な状態を維持してさばく技術
個体差のある魚だからこそ目利きがモノをいう!
漁師が全身全霊をかけて釣り上げたカツオのバトンを次に受け取るのは「鮮魚店」!同じ群れで同じ餌を食べて育ったカツオでも、その身質には大きな個体差が生じます。さらに、一尾のカツオでも「半身は美味しいが、半身はまずい」ということもあるため、魚体だけでなく身質まで見極める鋭い目利きが必要。もちろん鮮度を維持しなくてはいけないので、さばく作業のスピード感も重要です。鮮魚店員たちは目の前にやってくるお客様からの期待に応えるべく、全神経をカツオに注いでいます!
1. 競りでの鮮度見極め
久礼漁港に水揚げされるカツオは漁師さんが丁寧に釣り上げ、かつ鮮度に気を配っている為、すでに高いレベル。鮮魚店店主は、その中からさらに状態の良いカツオを選ぶべく、目の透明感や身の色の鮮やかさ、釣り上げた漁師の氷の効かせ方の特徴を総合的に判断し買い付けます。
2. スピーディーにさばいて身の風合いを見る
カツオはモチッと柔らかい身が美味しいと評価されます。そうした身はさばいたときに包丁に吸い付き、断面に独特の風合いが生まれます。逆に、硬い身はスパッと切れ断面が真っ直ぐに。プロは、とにかくスピーディーに切り、その後目を凝らし微妙な風合いの違いを察知します。
3. 触って選別する
2で身に風合いがあったとしても硬すぎても柔らかすぎてもダメ (柔らかすぎるカツオは「ブスブス」と呼ばれます)。さばいた身を指で軽く触って、身の柔らかさを確認。「弾力があるけど硬くない状態」という、表現するのさえも難しい微妙な感触を察知します。
4.カツオは常に冷やし鮮度を保つ
どんなに優れた身質のカツオでも鮮度が落ちてしまえば台無しです。鮮魚店のプロたちは競りで仕入れたカツオは常に冷やすことを気を付けます。また可能な限り短時間でさばき、お客様へ届けることを目指しています。
カツオこぼれ話
まずいカツオ = ゴシ(ゲジ)って?
右がゴシ、左が通常のカツオ。久礼に移住したばかりの編集担当には全く見分けがつきませんでした。
カツオは、鮮魚店や漁師など魚のプロでも、見極めが難しく「最も予想が外れる魚」とされています。高知では、生で食べることのできないまずいカツオのことを「ゴシ(ゲジ)」と呼びます。ゴシのカツオは、長年カツオを扱ってきた鮮魚店のプロでも、実際に包丁でさばいてみるまで良し悪しがわかりません。田中鮮魚店では、競りで仕入れたカツオの約15%がゴシだそうです。ゴシにも、匂いがする、硬すぎる、柔らかすぎるなどの種類があります。 では、実際にゴシはどれほどまずいのでしょう?今回特別に分けてもらい実食してみました!
衝撃事実!!久礼新参者の編集担当にはゴシはそこまでまずくなかった(笑)
田中社長曰く「噛む前にほら、口の中で砕けるろう?!身質が割れ気味で硬い!」というゴシを食べましたが・・正直そんなに硬さが気になりませんでした。そして「くさい」というタイプのゴシも食べましたが、たしかに集中して味わってみると鉄っぽい匂いが感じられるのですが「意外と、食べれるじゃん!」というのが率直な感想です。東京ではスーパーで買って食べていたような味でした。今回そこまでの強烈なゴシではなかったものの、このレベルで生では売らないという久礼の鮮魚店の基準の厳しさと、わずかな差異を判別できる蓄積された技術力の高さを感じました。
3.
食べるプロ
食べる量が桁違い!カツオ偏差値の高すぎる町民
味の違いがわかる町民が、鮮魚店を日々鍛える!
久礼の漁師や鮮魚店が徹底的にカツオにこだわる理由…それは、カツオの味の違いがわかる町民(=食べるプロ)がいるから!久礼の人々は、田中鮮魚店によるとおよそ8割刺身:2割タタキの比率で食べるそうで、鮮度命の刺身へのこだわりが強いそう。先祖代々カツオを食べ続けてきたからこそ、口の肥えた人が多く味の好みも細分化しています。この食べるプロによる忖度ない評価が、久礼の漁師や鮮魚店が高いレベルの仕事を行う緊張感とモチベーションに繋がっています。
町民の食べるこだわり
ポイント1 自分にぴったりの鮮魚店を見つける
カツオの味を細かく分類すると、うま味、甘み、酸味、におい、食感…等があり、どれを重視するかは人それぞれです。各鮮魚店は、店主の感覚をもとにカツオの選別をしているので、自分の感覚と近い鮮魚店を見つけることでより自分の好みにあったカツオと出会える確率が高まります。
ポイント2 カツオの色や身を見て味を想像する
赤身の色、脂の入り方やグラデーションを見て、味や匂いを想像します。鮮やかな赤身に美味しさを感じる人もいれば、熟成された味や匂いを求める人もいるので、正解は人それぞれです。また、切った断面やその角からは身の食感が想像できます。スパッと切れているような身は硬めで、毛羽立つように見える身は粘りがあります。これも好みの問題です。
ポイント3 タレや薬味、一緒に味わうものにこだわる
カツオ、特にタタキについては「タレ」や「薬味」も重要なポイントです。タレ一つとっても醤油感が強いものと酸味感の強いものに分かれます。さらに、薬味は?となれば無限の選択肢が広がります。ちなみに、私はタタキは「タマネギたっぷりめ、ニンニク無し」で味わうのが好きです。カツオの刺身はビールと合わせたいですね。