久礼のカツオの歴史

歴史・漁の進化

1.

久礼のカツオの昔と今

400年以上前から続く「カツオの一本釣り漁」の町!
中土佐町・久礼

特産であるカツオ節の製造を土佐藩が奨励していたこともあり、土佐沖では古くからカツオ漁が盛んでした。その漁法として久礼で400年以上の伝統を誇るのが「一本釣り」です。巻き網漁で獲れたカツオと違って傷がつかず、鮮度がよく、群れを獲り尽くさない、カツオにも、食べる人にも、環境にもよい漁法なんです。

カツオこぼれ話

やはり中土佐町でもカツオ節がつくられていた!160年以上前のカツオ節も発見!

現在の中土佐町にカツオ節製造工場はありませんが、最も古い記録では1656年頃には久礼地区や上ノ加江地区で製造が行われていたという文献が残っており、安政年間に製造されたとされるカツオ節(写真)も見つかっています。こちらのカツオ節は中土佐町役場で所蔵されています(カツオ節の香りはもうしません)。

技法の進化

一見すると単純な魚釣りに見える「一本釣り漁」ですが、実はカツオの生態や性格を研究し尽くしてたどり着いた、最善かつ究極の漁法なのです。時代が変わってもその漁法はほぼ変わることはありませんでしたが、一尾でも多くの新鮮なカツオを釣り上げたい漁師たちの情熱によって大きく三つの変化が起きていました。

カツオの一本釣り漁を進化させた三大革命!

1. カンコ(いけす)

かつては餌となるイワシを桶に入れて一番若い船員が常に海水を入れ替えながら漁場に向かっていました。革命が起きたのは明治16〜17年頃、今の土佐清水(諸説あり)のカツオ漁師が船底に穴を開けて常時海水を取り込む「カンコ」を発明。水替えが不要になっただけでなく、イワシの状態も良くなり、より遠くへ漁に行けるようになりました。

2. 動力化

漁船は長らく人力の手漕ぎや、帆を利用した風力で動かしていました。発動機(エンジン)を搭載した船が出現したのは、明治39年のことですが、それまで使っていた和船に発動機をただ取り付けた為、様々な問題が発生。改良を重ねながら大正末期から昭和初期にかけて一気に進化し、船体も速度もアップしました。

3. 散水機

活きのいいイワシが逃げ回っているように見せる為、かつての漁師は片手に釣り竿を、もう片手に「汐ノカイ」という竹製の長いヘラ状の道具を持ち、水面をパシャパシャと打ちながら漁をしていました。発動機が搭載されたことで「散水機」が登場し、漁師は両手で釣り竿を持てるようになり、釣り上げスピードも格段に向上しました。

カツオこぼれ話

なぜ400年以上も変わらない!?釣り方と餌

和船によるカツオ一本釣り漁絵馬(1894年 中土佐町矢井賀・大神宮蔵)

和船によるカツオ一本釣り漁絵馬(1894年 中土佐町矢井賀・大神宮蔵)

400年以上も続いているにも関わらず、漁法がほぼ変わっていないのがカツオの一本釣り漁の凄いところ!基本「生きた餌しか食べない」というカツオの超頑固な性格と、イワシが跳ねているような細かい波を立てることでカツオを興奮させ釣り針に食いつかせるという人間の知恵から編み出された究極の漁法です。

2.

カツオ漁の今

カツオ船

久礼では、日戻り漁で生ガツオを獲る沿岸船4隻が操業中!

沿岸船も近海船も全国的に減少傾向のなか、久礼漁港では、港から近い24時間以内の日戻り漁をする小型の「沿岸漁業」船が4隻操業中。一つの港に沿岸船が4隻もあることは特徴で、久礼は鮮度抜群の生ガツオを食べられる町です。

主な漁場

土佐沖の「黒潮牧場」と「地ナブラ」(群れ)のカツオを釣る

沿岸船の漁場は土佐沖で、大型浮き魚礁「黒潮牧場」での漁が多いです。「黒潮牧場」は回遊魚が水面上の流木などに集まる習性を利用して漁獲量を確保しようと、高知県が1984年にブイを設置し2022年現在15基が稼働中。漁船は前日の漁獲量を参考にその日漁を行うブイを決めて出発。また「地ナブラ」と呼ばれる魚群がいればそこでも漁を行います。

久礼独自の競りシステム

1尾から購入OK!消費者に近いこまやかなシステム

カツオの競りは、大きなコンテナ単位で仲買人がまとめ買いし小売りへ卸ろすのが一般的ですが、久礼漁協ではカツオ船のおかみさん達が1尾ずつ選別し、3~4キロサイズの一押しカツオは1尾から購入可能。より消費者に近いシステムです。さらに、コンディションの悪いカツオは「尾が切れている」「アゴが外れている」等状態ごとに分類されるこまやかさです。

3.

SDGsな久礼カツオ

サステナブルな漁

時代が久礼に追いついてきた!
地球に優しい久礼のカツオ漁

久礼で400年以上続くカツオの一本釣り漁は、巻き網漁のように群れ全てを獲り尽くさず、かつ沿岸中心の近い漁場なので使用燃料が比較的少ないエコな漁法です。さらに、久礼漁協の競りでは、発泡スチロールではなくカゴを用い鮮魚店と漁協間で繰り返し使用しています。また、魚が売られる久礼大正町市場と漁協が車・自転車でわずか5分の距離という近さも地産地消につながっています。

カツオ堆肥

中土佐町久礼のなかでカツオの資源循環!
鮮魚店と農家のコラボ「カツオ堆肥」で、約50種類もの野菜を栽培!

久礼大正町市場からほど近い「中里自然農園」では、全国的に珍しいカツオの町ならではの有機肥料・カツオ堆肥を使い、約50種類の野菜を農薬不使用で栽培中です。カツオ堆肥は①久礼大正町市場の田中鮮魚店のカツオのアラと高知競馬場で作られる馬糞堆肥を混ぜて2週間ほど放置発酵②1週間ごとに上下を混ぜる事を5週間ほど続け③仕上げに最低1カ月間放置発酵させます。発酵中の強烈なアンモニア臭にも負けず、3カ月間もかけ作られています。